【ウサジイ昔ばなし】〈109〉・・・瀬戸の土地
劇団の帳簿からその名が消えて数年、「瀬戸の土地」は死語というか、ほぼ忘れ去られている。ま、それは良きことでもあるのですが…先日公演の帰途、恵那市南部〜中馬街道を走り、瀬戸市上品野に差しかかった際に「その土地」を想い出した。むすび座は市内鶴舞〜(南区間借り)〜中川区〜緑区大根山と住いを変えてきたが、1995年に道路新設により現在の緑区川添に引っ越してきた。
その引っ越しが持ち上がった際、どこへ行くべきか議論が始まる。バブルがはじけたものの、まだまだ挑戦的な意見も多く、完全自前の稽古場を建設しよういう方向になった。(大根山稽古場は借地に自前で建設)となると市内での土地探しは価格的に難しい。場合によっては事務所を市内に置き、稽古場は郊外に作るてもあるか(?)とも考えた。(本拠地が名古屋市だと、市からの助成等で有利だったのか?)そんな折、瀬戸市在住の劇団員が良い物件を探してきた。山林だから安価だが、住宅地に隣接するため稽古場建設が可能だという。これに関しては、その時は慎重に話し合ったはずだ。が、後から考えると、飛びつくようにして買ってしまった感がある。
買ってはみたものの、その後の議論の中で「事務所と稽古場が離れていては、劇団の統一が図れない」「現住所から瀬戸まで通うのは大変だ」「公演先からどこに帰るというんだ?」今までの生活に慣れているため、事務所・稽古場分離案のイメージがつかめない。結局、瀬戸案は廃案となり、田園が工場地域へと変貌しようとしていた現在の川添に引っ越すことになった。田んぼを埋立てたばかり土地を当時の代表が探してきて、候補地をジイも見分した。トラックの出入りを考慮して現在の場所に決定。地主さんがガワを作り、内装を借家側・劇団が担当した。返還時には内装を取っ払うという約束です。かくして引っ越しは終了するのですが・・・
肝心の買ってしまった(?)土地は放置状態。そのため数年後には、建造物不可の土地になってしまった。手作りのプレハブでも作っておけば、住宅地として認知されていたのに、「山林」の刻印を押されてしまった。これでは買い手もつかない。その後、十数年にわたって劇団財産として帳簿に記載続けられることになる。数千万円の財産を持っているはずなんだが、その実は如何に?結局売った時には、買い値の十分の一にしかならなかった。・・・土地転がしが不得手‥というか、そんなことに縁のない集団だったのですね。